就職関連

生物統計家に英語力は必要?

生物統計家に必要なスキルとして、統計学や応用統計の知識、また、他部門の人たちと議論する機会がありますので、コミュニケーション力は必要となります。それでは英語力はどうでしょうか?個人的な結論としては必要であるかと思います。これで記事を終えるわけにはいかないので(笑)なぜ必要なのか、どのような場面で必要なのか、最近のAIの発展と絡めたお話を紹介していきます。

英語力の必要性について

英語力が必要だと感じる場面を紹介していきます。

国際的なガイドラインの読解

製薬企業で開発申請業務に携わる際に理解が必要なガイドラインとして、ICH(医薬品規制調和国際会議)によるガイドラインがあります。日本語にも翻訳されているものが多くありますが、原文は英語で記載されており、語訳にも限界があります。そのため、深い理解をするためには、英語の原文を読む解く必要がある機会もございます。また、ICHガイドラインが改訂される際には5つのステップを経て、改訂されますが、最後のステップ5までは英語で進められることがほとんどです。そのため、先に情報を取得する際には英語で読み解いていく必要があります。

ICHガイドライン:医薬品の品質、安全性、有効性に関する国際的なガイドライン。ICHガイドラインは、以下の5つのステップを経て合意・批准されます

  1. 専門部会による検討:各分野の専門家が、ガイドライン案を作成
  2. パブリックコメントの募集:作成されたガイドライン案は、パブリックコメントに付され、広く意見が募集されます
  3. 専門部会による検討と改訂:寄せられた意見を踏まえ、専門部会がガイドライン案を改訂します
  4. ICH総会での合意:改訂されたガイドライン案は、ICH総会で合意・批准されます
  5. 各地域・国での運用:合意されたガイドラインは、各地域・国で運用されます

英語ドキュメントの読解・作成

規制当局とのやり取りにおいても英語は避けて通れない場面があります。日本国内ではPMDA(医薬品医療機器総合機構)が規制を担っておりますが、グローバル試験ではFDA(米国食品医薬品局)やEMA(欧州医薬品庁)への提出資料が必要となります。統計解析計画書(SAP)、解析結果の報告書(CSR)なども英語で作成される場面が多く、論理的でわかりやすい英語表現が求められます。また、外資系で働く場合は、ドキュメントは基本的に英語で統一されていることが多いため、英語でのドキュメント作成や読解が求められます。

英語で行われる会議・コミュニケーション

CROや外資系製薬企業などでは、プロジェクトメンバーが多国籍であることも珍しありません。臨床開発チーム、統計チーム、データマネジメントチームなどが英語で会議を行い、Onlineで意見交換をすることが多くあります。
ここで必要になるのは、ネイティブレベルの英会話ではなく、統計的に正確な内容を、簡潔かつ明確に伝えられる英語力です。そのため、相手が言っていることを理解し、統計的な観点から意見を伝えていく力が必要となります。

論文・技術文書の読解と執筆

生物統計家は新しい手法や研究結果に常にアンテナを張っておく必要があります。多くの有用な論文や学会発表は英語で行われ、たとえばNEJM(New England Journal of Medicine)やStat in Medicineなど、一流誌はすべて英語での投稿が基本です。
最新の手法を取り入れるためには、論文の英文をスムーズに読解できる力が求められる。さらに、社内外で自らの解析手法や結果を報告する際にも、図表とともに英語での説明が求められることがあります。これは、統計的な正確性に加えて、明快で簡潔な英語のロジック展開力が重要となります。。

英語力と統計力のバランス

ここまでの内容のみですと、”英語力は必ず必要なんだ!”と思い、英語力ばかりに気を取られてしまうかもしれません。しかし、統計の本質を見失ってしまっては本末転倒です。生物統計家にとって主軸となるのは、あくまで統計理論とそれを現実の臨床開発に応用する応用力です。英語はそれらを支える「ツール」であり、「目的」ではありません。
重要なのは、統計的な考え方を英語で表現できる力です。特に昨今ではGoogle翻訳やAI支援ツールが進化した今、自動翻訳に頼る場面も増えてきたため、以前と比較すると、メールの作成やドキュメント読解・作成の際にはそれらの力を借りることで、効率的に業務を進めることはできます。しかし、AIや翻訳にもミスがありますので、(特に統計的な側面が強くなり難解になればなるほどそのようなことが発生してしまいます。)自分たちで添削する必要もございます。また、会議の際には自分の言葉で英語を選び、説明できることが、プロフェッショナルとしての信頼を高めていくかと感じます。

まとめ

今回は生物統計家に英語力は必要かという議題について、必要であると感じる場面と、英語力と統計力のバランスについて紹介していきました。最近のAIの発展により英語力は必要ではなくなる可能性も出てきておりますが、個人的にはまだまだ必要となるかと思います。特に自分が業務を通じて、日本語へ翻訳してもらったり、ドキュメントを英語で作成してもらうと、意図していない内容が出力されたりもします。そのため、一定の(特に統計に関する英語に関しての)理解が必要となるかと思います。

ABOUT ME
tomokichi
外資系製薬会社で生物統計家として働ている1児のパパ。生物統計家とは何か、どのようなスキルが必要か、何を行っているのかを共有していきたいと思っております!生物統計に関する最新情報を皆様にお届けすべく、日々奮闘中です。趣味は筋トレ、温泉巡り、家族と散歩。