この記事でわかること

💡 ポイント
・相対リスク(リスク比)・オッズ比・ハザード比は、それぞれ「何を」比べている指標なのか
・2×2表を使ったリスク比・オッズ比の求め方と、両者がズレる理由(稀な疾患の仮定)
・ハザード比が「時間」と「打ち切り」をどう扱い、リスク比・オッズ比と何が違うのか
・Rで2×2表からリスク比・オッズ比を、生存データからハザード比を計算する方法(コード付き)
・研究デザインごとの3指標の使い分けと、実務で誤解しやすいポイント

はじめに

臨床試験や疫学の論文を読むと、治療の効果を表す数字として「相対リスク(リスク比)」「オッズ比」「ハザード比」という、よく似た3つの言葉が登場します。どれも「治療群と対照群を比べた比(ratio)」であり、1より小さければ良い方向、1より大きければ悪い方向、というところまでは共通しています。ところが、この3つは計算の仕方も、使える場面も、そして解釈の仕方も異なります。混同したまま「オッズ比が0.4だからリスクが6割減った」などと読んでしまうと、効果の大きさを誤って伝えてしまうことにもなりかねません。

これらは、統計を学ぶ大学生や社会人、そして製薬・医療の現場でデータや論文に触れるすべての方にとって、避けて通れない基本概念です。本記事では、3つの指標を数式の丸暗記ではなく「何を比べているのか」という視点から整理し、具体的な2×2表の数値例とRによる実装を交えて、やさしく解説していきます。数式も登場しますが、そのつど日本語で意味をかみくだいて説明しますので、身構えずに読み進めてください。

3つの指標の全体像 ― 「絶対リスク」から出発する

3つの指標の違いを理解する近道は、まず出発点となる「絶対リスク」を押さえることです。絶対リスク(absolute risk)とは、ある集団のうちイベント(発症・死亡など)が起きた人の割合そのもの、たとえば「治療群の発症割合は15%」といった生の数字を指します。この絶対リスクをどう比べるかによって、指標が枝分かれしていきます。

相対リスク・オッズ比・ハザード比は、いずれも「治療群と対照群という2つの群を比べた」である点は共通しています。違うのは、何を比べているかです。相対リスクは「各群のリスク(割合)」を、オッズ比は「各群のオッズ(起こりやすさの別表現)」を、ハザード比は「各時点の瞬間的なリスク(ハザード)」を比べます。この“比べる対象”の違いが、そのまま使える研究デザインや解釈の違いにつながっていきます。

💡 ポイント
3つとも「2群の比」ですが、比べている中身が違います。相対リスク=リスクの比オッズ比=オッズの比ハザード比=瞬間リスクの比。この一点を押さえるだけで、以降の話がぐっと見通しよくなります。

相対リスク(リスク比)とオッズ比 ― 2×2表で理解する

効果指標のなかでも、いちばん直感に近いのが「絶対リスク(発生割合)」です。ここでいうリスクとは、ある集団のうちイベント(ここでは病気の発症)が起こった人の割合のことをいいます。次のようなランダム化比較試験(RCT)の結果を例に考えてみましょう。治療群・対照群とも200人ずつを追跡し、一定期間の発症の有無を数えたとします。

発症(イベントあり)非発症(イベントなし)合計
治療群30170200
対照群60140200

この表から、それぞれの群の絶対リスクは、治療群 30/200 = 0.15(15%)、対照群 60/200 = 0.30(30%)と計算できます。まずはこの2つの数字が出発点になります。

相対リスク(リスク比, Risk Ratio, RR)

相対リスクは、2つの群のリスクを割り算で比べたものです。

\[ \mathrm{RR} = \dfrac{\text{治療群のリスク}}{\text{対照群のリスク}} = \dfrac{0.15}{0.30} = 0.50 \]

この式は「治療群のリスクは対照群の0.5倍」、つまり治療によって発症リスクがちょうど半分になることを意味します。RRが1なら差なし、1より小さければリスク低下、1より大きければリスク増加と、そのまま「何倍か」で読めるのが利点です。ただしRRを計算するには各群のリスク(発症割合)が必要なので、追跡して発症を数えられる前向き研究(コホート研究やRCT)でしか直接は求められません。

オッズ比(Odds Ratio, OR)

もう一つの指標がオッズ比です。まず「オッズ」とは、起こる確率を起こらない確率で割った値をいいます。

\[ \text{オッズ} = \dfrac{p}{1-p} \]

つまり発症する確率を非発症の確率で割ったもので、上の例では治療群のオッズが 30/170 ≒ 0.176、対照群のオッズが 60/140 ≒ 0.429 です。オッズ比は、この2つのオッズの比になります。

\[ \mathrm{OR} = \dfrac{\text{治療群のオッズ}}{\text{対照群のオッズ}} = \dfrac{30/170}{60/140} = \dfrac{30\times140}{170\times60} = \dfrac{4200}{10200} ≒ 0.41 \]

同じデータなのに、RR = 0.50 に対して OR ≒ 0.41 と、少しずれた値になりました。

ORとRRはなぜ一致しないのか

この2つは、イベント(発症)が多いか少ないかでズレ方が変わります。イベントが多いほど、ORはRRより1から遠い(より極端な)値になります。同じ「半分」でも、稀な疾患のとき(治療群 3/1000 = 0.003、対照群 6/1000 = 0.006)は両者がほぼ一致します。

相対リスク RRオッズ比 OR
イベントが多い例(0.15 vs 0.30)0.500.41
稀な例(0.003 vs 0.006)0.500.50

稀な疾患の仮定(rare disease assumption)

このように、イベントの発生が稀(おおむね10%未満)なときには OR ≒ RR となります。これを「稀な疾患の仮定(rare disease assumption)」と呼びます。では、なぜRRではなくORをわざわざ使う場面があるのでしょうか。代表例が症例対照研究です。この研究デザインでは、あらかじめ発症した人(症例)と発症していない人(対照)を集めて過去を比較するため、集団全体の発症割合(リスク)を直接は計算できません。そこで、リスクの比が計算できない代わりにオッズ比が用いられます。また、統計解析で広く使われるロジスティック回帰では、回帰係数がちょうど log(OR)(オッズ比の対数)に対応するため、ORは理論的にも扱いやすい指標なのです(ロジスティック回帰でのオッズ比の扱いは、順序ロジスティック回帰(比例オッズモデル)とは もあわせてご覧ください)。

⚠️ 注意
オッズ比を相対リスクと同じ感覚で「リスクが○倍(半分)になった」と口語的に読み替えるのは危険です。イベントが多い場合、ORはRRより1から離れるため、そのまま倍率として解釈すると効果を過大に見積もってしまいます。上の例でも OR 0.41 は「6割減」に聞こえますが、実際のリスク低下は RR 0.50 の「半分」であり、両者は別物です。

ハザード比 ― 時間を考える生存解析の指標

なぜリスク比・オッズ比だけでは足りないのでしょうか

相対リスク(リスク比)とオッズ比は、いずれも「観察期間の最後にイベント(病気の発症や死亡など)が起きたか、起きなかったか」という二値の情報だけを見ています。しかし、実際の臨床試験ではもう一歩踏み込んだ問いが重要になります。それは「イベントがいつ起きたか」という時間の情報です。

たとえば、同じ「1年以内に再発した」でも、投与3か月で再発した人と11か月で再発した人とでは、治療の意味合いが大きく異なります。さらに臨床試験では、途中で来院しなくなったり、試験が終了したりして「その人のイベントがまだ観察できていない」という状況がしばしば発生します。これを打ち切り(censoring, センサリング)と呼びます。打ち切りとなった人は「イベントが起きなかった人」ではなく「そこまでは起きていないことだけが分かっている人」であり、二値の集計ではこの情報を正しく活かせません。

こうした「イベントまでの時間」と「打ち切り」を同時に扱うための統計手法が、生存時間解析(survival analysis, サバイバル解析)です。

ハザード(瞬間発生率)とは

生存時間解析の中心となる考え方がハザード(hazard, 瞬間発生率)です。直感的には、「その時点までイベントを起こさずに生存していた人が、次の瞬間にイベントを起こす勢い(瞬間的なリスク)」を表します。厳密には次のように定義されます。

\[ h(t) = \lim_{\Delta t \to 0} \dfrac{P(t \le T \lt t+\Delta t \mid T \ge t)}{\Delta t} \]

ここで \(T\) はイベントが起きるまでの時間を表す確率変数です。式の分子「\(P(t \le T \lt t+\Delta t \mid T \ge t)\)」は、「時点 \(t\) までイベントが起きていない(\(T \ge t\))という条件のもとで、ごく短い時間 \(\Delta t\) の間にイベントが起きる確率」を意味します。これを \(\Delta t\) で割って \(\Delta t\) をゼロに近づけることで、その瞬間の「起きやすさの速度」を取り出しているのです。

ハザード比(Hazard Ratio, HR)とは

2つの群のハザードを比べたものがハザード比(Hazard Ratio, HR)です。治療群のハザードを対照群のハザードで割って求めます。

\[ \mathrm{HR} = \dfrac{h_1(t)}{h_0(t)} \]

ここで \(h_1(t)\) は治療群、\(h_0(t)\) は対照群の、時点 \(t\) におけるハザードです。もしこの比が各時点でほぼ同じ値になるなら、「治療の効果は時間によらず一定」とみなせます。これを比例ハザード仮定(proportional hazards assumption)と呼び、生存時間解析で最も広く使われる Cox比例ハザードモデル は、この仮定のもとでハザード比を1つの値として推定します。

解釈は直感的です。HRが1より小さければ(HR<1)、治療群のほうがイベントの起きる勢いが弱い、つまり治療がイベントを遅らせる・減らす方向にはたらいていることを示します。逆にHRが1より大きければ(HR>1)、イベントを増やす方向を示します。HR=1なら両群に差はありません。

ハザード比はリスク比・オッズ比と何が違うのでしょうか

ハザード比の特徴は、大きく3点にまとめられます。第一に、打ち切りのあるデータを扱えること。第二に、単なる有無ではなくイベントまでの時間という情報を使うこと。第三に、比べているのは各時点における瞬間的なリスク(ハザード)の比であることです。この3点目こそ、リスク比・オッズ比との本質的な違いです。

⚠️ 注意
HR=0.7を見て「リスクが3割減った」と単純に言い換えるのは、実は正確ではありません。ハザード比はあくまで瞬間ハザードの比であり、「最終的に何割の人がイベントを起こしたか」という累積リスクの比とは一般に一致しないからです。「イベントの起きる勢いが各時点でおよそ3割低い」といった、瞬間リスクの比としての解釈を心がけると誤解を避けられます。

比例ハザードが崩れるとき

ハザード比が便利なのは、比例ハザード仮定が成り立っている場合です。しかし、治療効果が時間とともに変化する場合、たとえば投与初期は差がないのに後半から効いてくる、あるいは2群の生存曲線が途中で交差してしまうような場合には、この仮定が崩れます。すると「試験全体を通じたハザード比」という1つの数値で効果を要約すること自体が不適切になり、平均的な差を誤って小さく(あるいは大きく)見せてしまいます。

こうした状況では、RMST(制限付き平均生存時間, Restricted Mean Survival Time)Win Ratio といった、比例ハザード仮定に依存しない代替指標を検討することがあります。

💡 ポイント
ハザード比は「時間」と「打ち切り」を扱える強力な指標ですが、その意味が保証されるのは比例ハザードが成り立つときです。生存曲線の形を確認せずにHRだけを鵜呑みにしない、という姿勢が実務では大切になります。

3つの指標の性質を対比してみましょう

ここまで見てきた相対リスク・オッズ比・ハザード比の違いを、使うデータや研究デザインの観点から整理すると次のようになります。

指標使うデータ打ち切りの扱い主な研究デザイン代表的なモデル
相対リスク(リスク比)各群のリスク(イベント発生割合)扱えないコホート研究・RCT(ランダム化比較試験)2×2表・log-binomial回帰
オッズ比各群のオッズ扱えない症例対照研究・横断研究・RCTロジスティック回帰
ハザード比イベントまでの時間+打ち切り扱える生存時間を伴う試験(追跡調査)Cox比例ハザードモデル

このように、同じ「効果の大きさ」を表す指標でも、扱えるデータの種類や前提となる研究デザインが異なります。「イベントが起きたかどうか」だけでなく「いつ起きたか」まで問題にする場面では、ハザード比が最も自然な選択肢になるのです。

Rによる実装 ― RR・OR・HRを計算する

ここまで見てきた3つの指標を、実際にRで計算してみましょう。手を動かすと「同じデータでもRRとORで値が変わる」ことが実感でき、指標の性質がぐっと理解しやすくなります。二値アウトカム(発症したか/しなかったか)からはRR(リスク比)とOR(オッズ比)を、イベントまでの時間データからはHR(ハザード比)を求めます。

2×2表からRR・ORを計算する

まず、記事全体で使ってきた統一データを2×2表(治療群・対照群 × 発症・非発症の4マスの表)にまとめます。疫学の指標計算に特化した epitools パッケージの riskratio()(リスク比)と oddsratio()(オッズ比)を使うと、点推定値と95%信頼区間(95%CI:推定値のばらつきの幅)を一度に得られます。

library(epitools)

# 2×2表を作成(行=群、列=アウトカム)
#            非発症  発症
# 対照群       140    60   → リスク 60/200 = 0.30
# 治療群       170    30   → リスク 30/200 = 0.15
tbl <- matrix(c(140, 60,
                170, 30),
              nrow = 2, byrow = TRUE)
dimnames(tbl) <- list(Group   = c("対照", "治療"),
                      Outcome = c("非発症", "発症"))

# 各群のリスク(発症割合)を確認
prop.test(c(30, 60), c(200, 200))

# リスク比(RR)とオッズ比(OR)を計算
riskratio(tbl)
oddsratio(tbl)

上のコードを実行すると、次のような結果が返ってきます(> で始まる行が出力です)。

> prop.test(c(30, 60), c(200, 200))

	2-sample test for equality of proportions with continuity correction

data:  c(30, 60) out of c(200, 200)
X-squared = 12.057, df = 1, p-value = 0.0005159
alternative hypothesis: two.sided
95 percent confidence interval:
 -0.23551374 -0.06448626
sample estimates:
prop 1 prop 2 
  0.15   0.30 

> riskratio(tbl)
        risk ratio with 95% C.I.
Group    estimate  lower  upper
  対照      1.000     NA     NA
  治療      0.500  0.337  0.742

> oddsratio(tbl)
        odds ratio with 95% C.I.
Group    estimate  lower  upper
  対照      1.000     NA     NA
  治療      0.412  0.254  0.669
📝 解釈・補足
治療群のリスクは 0.15、対照群のリスクは 0.30 で、その比である リスク比 RR = 0.15 / 0.30 = 0.50 は「治療によって発症リスクがちょうど半分になった」ことを示します。一方 オッズ比 OR ≒ 0.41 は、同じデータなのに RR の 0.50 よりもさらに 1 から離れた値になっています。これは今回のようにイベント(発症)が比較的多い(対照群で 30%)状況では、OR が RR より効果を強調する方向に振れるためです。RR と OR が一致するのはイベントがごくまれなときだけで、発症が多いほど両者のズレは大きくなります。数値の大きさをそのまま「◯倍」と読み替えるときは、どちらの指標かを必ず確認しましょう。

生存データからHRを計算する

次に、イベントまでの時間(生存時間)を扱うハザード比を求めます。ここでは survival パッケージに付属する lung データ(進行肺がん患者の生存記録)を使い、coxph()(Cox比例ハザードモデル)で性別 sex によるハザード比を推定します。Surv(time, status) は「生存時間」と「イベントが起きたか(打ち切りか)」をひとまとめにした生存オブジェクトです。

library(survival)

# lung: 肺がん患者の生存データ(time=生存日数, status=生死, sex=性別)
fit <- coxph(Surv(time, status) ~ sex, data = lung)
summary(fit)

summary() の主要部分は次のように出力されます。

> summary(fit)
  n= 228, number of events= 165 

       coef exp(coef) se(coef)     z Pr(>|z|)   
sex -0.5310    0.5880   0.1672 -3.18  0.00149 **
---
Signif. codes:  0 '***' 0.001 '**' 0.01 '*' 0.05 '.' 0.1 ' ' 1

    exp(coef) exp(-coef) lower .95 upper .95
sex    0.5880      1.701    0.4237    0.8160

Concordance= 0.579  (se = 0.021 )
Likelihood ratio test= 10.63  on 1 df,   p= 0.001
📝 解釈・補足
exp(coef) が求めたいハザード比で、HR = 0.588(約 0.59)です。lung データでは男性が sex=1、女性が sex=2 なので、これは「女性は男性に比べて、各時点での死亡ハザード(瞬間的な死亡リスク)が約 41%(= 1 − 0.59)低い」ことを意味します。95%信頼区間は 0.424〜0.816 で 1 をまたいでいないため、この差は統計的に有意です(p = 0.0015)。ここで大切なのは、HR は各時点の「瞬間ハザードの比」であって、「累積の発症リスクの比(=RR)」とは意味が異なる点です。「女性の死亡リスクが 41% 低い」と言うときも、それは瞬間ハザードの比較であり、最終的に亡くなる人数の比とは一致しないことに注意しましょう。

実務での使い分け

3つの指標は「どれが正解」というものではなく、研究デザインとアウトカムの種類によって適切なものが決まります。ざっくり言えば、はじめに全員を追跡できる前向き研究では RR、後ろ向きに集めた症例対照研究やロジスティック回帰では OR、そして「イベントが起きるまでの時間」と打ち切りを扱う場合は HR、という対応関係になります。下の表に典型的な場面と推奨指標を整理しました。

場面・研究デザイン推奨指標理由
前向きコホート研究・RCT(二値アウトカム)リスク比(RR)各群のリスク(発症割合)を直接計算できるため。直感的で一般読者にも伝わりやすい。
症例対照研究(後ろ向き)オッズ比(OR)発症者・非発症者を先に集める設計上、リスクそのものを推定できず、オッズ比しか計算できないため。
ロジスティック回帰(多変量調整)オッズ比(OR)モデルの係数が対数オッズ比に対応し、交絡因子を調整した OR が自然に得られるため。
イベントまでの時間・打ち切りあり(生存解析)ハザード比(HR)追跡期間の違いや途中脱落(打ち切り)を適切に扱え、「いつ起きるか」まで含めて比較できるため。
イベントがまれ(発生率が低い)RR ≒ OR(どちらでも可)イベントがまれなら OR は RR の良い近似になり、両者の差はごく小さくなるため。
🔑 まとめ・実務ポイント
「相対」だけでなく「絶対」も併記する:RR や OR、HR は相対的な大きさしか表しません。「リスク半減」と聞くと大きく感じても、元のリスクが 2% → 1% なら実際の差はわずか 1 ポイントです。効果の実感を正しく伝えるには、絶対リスク差や NNT(1人の発症を防ぐために必要な治療人数)を必ず添えましょう。
ORをRR(相対リスク)と混同しない:特にイベントが多い状況では、OR は RR より 1 から離れた極端な値になります。ロジスティック回帰の OR を「リスクが◯倍」と読み替えると効果を過大評価しがちです。
HRは比例ハザードが前提:Cox 回帰の HR は「2群のハザード比が追跡期間中ずっと一定」という比例ハザード性を仮定しています。この前提が崩れる(途中で優劣が逆転するなど)と、単一の HR は解釈が難しくなるため、生存曲線や検定で前提の確認が必要です。

📚 この記事をより深く理解するための参考書籍

RR・OR・HR の背景にある考え方を、疫学・生存解析・医学統計それぞれの視点からさらに学びたい方に、実際に手に取って学べる定番書を3冊紹介します。

『ロスマンの疫学 第2版 ― 科学的思考への誘い』Kenneth J. Rothman 著/矢野栄二・橋本英樹・大脇和浩 監訳(篠原出版新社)
疫学の世界的な標準テキストの日本語版です。リスク比とオッズ比の意味の違い、症例対照研究でなぜオッズ比が使われるのか、交絡やバイアスをどう考えるかまで、本記事の RR・OR パートの土台となる「考え方」を平易な語り口で深められます。
『生存時間解析入門 原書第2版』D. W. ホスマー/S. レメショウ/S. メイ 著/五所正彦 監訳(東京大学出版会)
本記事で扱った Cox 比例ハザードモデルとハザード比を、腰を据えて学びたい方に最適な一冊です。生存時間データの扱い、ハザード比の解釈、比例ハザード性の確認方法まで、豊富な実例とともに解説されており、記事後半の HR パートをより深く理解できます。
『新版 医学統計学ハンドブック』丹後俊郎・松井茂之 編(朝倉書店・2018年)
計数データの解析(オッズ比・リスク比)、生存時間解析、ロジスティック回帰、疫学研究、因果推論までを1冊で網羅した事典的なハンドブックです。3つの効果指標を横断的に確認したいとき、また実務で「この場面はどの指標か」を調べたいときの座右の書として役立ちます。

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まとめ

本記事では、臨床研究でよく登場する相対リスク(リスク比)・オッズ比・ハザード比という3つの効果指標を、「何を比べているのか」という視点から整理してきました。相対リスクは各群のリスクの比で最も直感的に読める指標、オッズ比はオッズの比で症例対照研究やロジスティック回帰と相性がよく、イベントが多いときはリスク比より1から離れること、ハザード比はイベントまでの時間と打ち切りを扱える生存時間解析の指標であり、比例ハザードが前提になること ── これらの違いを、2×2表の数値例とRの実装を通じて確認しました。

実務では、同じ「効果あり」でも、どの指標で語るかによって読者が受け取る印象が変わります。効果の大きさを正確に伝えるには、比だけでなく絶対リスク差やNNT(治療必要数, Number Needed to Treat)を併記する、オッズ比をリスク比と混同しない、ハザード比を使う前に生存曲線の形(比例ハザード)を確認する、といった基本を押さえることが欠かせません。3つの指標を正しく使い分けられることは、論文を読む力にも、データを説明する力にも直結する、あなたの大きな強みになります。

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外資系製薬会社で生物統計家として働ている1児のパパ。生物統計家とは何か、どのようなスキルが必要か、何を行っているのかを共有していきたいと思っております!生物統計に関する最新情報を皆様にお届けすべく、日々奮闘中です。趣味は筋トレ、温泉巡り、家族と散歩。